窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

その後の猫達

夜中に逃げ出して、その後少し足の具合も良かったように思えたのだけれど、台風の翌日にまたやってきたギイヤンの足は、もう膝あてがついているかのように、膝と甲の部分がすり切れて肉が出てしまった場所が、また新たに剥けていて痛々しい。それでも一生懸命縁側に上ろうと鳴いているギイヤン。
やはりこのままではどうにも仕方がない。と、私は急遽病院へ連れて行くことにした。電話をすると、預かってから診察しましょう。と、先生が言ってくださったので、ご飯を食べ終えて台風一過の日だまりで、何も知らずにブツブツと時折何かを言いながら寝ているギイヤンを、私はムンズと捕まえて鞄に押し込んだ。

私鉄で2駅、歩いて20分の道のりだが、以前住んでいた家は駅から20分かかって毎日歩いていたので、なんということはない。けれど、ギイヤンにとっては初めてのできごと。ギイギイといつにも増して声を上げていたけれど、思ったよりは大人しい。そしてなんとなくおしっこをしてしまっている様子。ペットシーツをしておいてよかった。

診察の結果、足の骨折ではなくて脊髄のようだ。とのこと。これは厳しいかも。と、先生に言われた。
とりあえず、入院をしてもっと詳しく診てもらうことになり、病室の奥に入ると、先に連れて行った仔猫が片足の手術を終え、カラーをしてケージに入っていた。顔色も良くてなんとも愛らしい。これまで私も最初のキャベツから、母の所の数多くの猫、そして今の家の子まで、10数匹の仔猫に会ったけれど、この子はかなり可愛い部類だ。少女漫画に出てくるような顔をしている。そして小さい声でショボショボと鳴いている。その辺りは母親のアーニャに似ている。

仔猫の上のケージに入れてもらったギイヤンは、足を前に投げ出してお尻をついたままの姿勢ですごい顔で泣き叫んでいる。
「ギイヤン」なんて呼んでも、彼は自分が「ギイヤン」だとは知らないだろう。「タマ」と呼んだほうがいいのだろうか・・・。なんて思いながら顔を見ていたけれど、般若のような顔で鳴き続けているので先生にお願いをして病院を出た。
脊髄損傷だったら、どうなるんだろう。家の中では飼えない。でも外に出したら死んじゃうかも。色々と考えると胃が痛くなる。

夜半にドボチョンと仕事のことで電話。飲みながら仕事をしているようなので、会話の内容が飲み屋状態に近い。