窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

里子に

仔猫を拾ってからまる2ヶ月、個展の前で怒濤のような日々だったけれど、酒井さん夫妻とMさん、そして紹介してもらった動物病院の先生にも本当にお世話になった。
酒井さんには里親さんも紹介してもらい,仔猫は避妊手術を終えて10日程経って落ち着いたので,昨日一緒に里親さん宅に引き渡しにいった。
電車での移動は初めてだったし、大勢の人と会うのも初めて、産まれてから私の家以外で人の家に入ったのも初めてだったので、着いたときには、尻尾をたたんだまま固まっていた。
すぐに隅っこに入ってしまったり用意してもらったハウスから出てこないので,里親さんは心配そうだったが、病院でもおすみつきの良い子だったので、きっと新しい生活にもなじんでくれるだろうと思う。

仔猫の入っていたケージを片付けて,家の猫は心なしか伸び伸びしたようすで、じゃれたり走ったりと機嫌も良さそうだ。2ヶ月間、けっこうストレスだったことだろう。私が仔猫をケージから出して家の猫が寝ている日溜まりに連れて行き、ひなたぼっこさせると、しばらく我慢しているのだけれど、仔猫がじゃれて来たりすると耳や尻尾を細かく震わせてイライラして唸って逃げていったりしていた。
もっと大きくなれば慣れたのだろうけれど、あまりに歳の差がありすぎたのだった。


その点タロウは1歳半ではあるが、ノラのわりにもうすでに十分すぎる程の体格で腹回り48センチ6キロという立派なメタボ猫だ。そして家に入って来てご飯を食べたらすぐに寝る。この図々しさは,有無を言わせない雰囲気を醸し出している。
外にいるせいか、猫グッズなどにじゃれることもない。ドテッと転がったまま、時々ゴロンゴロンと裏返ったりしているけれど、ひっくり返ったまま熟睡している。家の猫はいつもあっけにとられた様子で観ているだけだ。