窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

猫の記憶

小夏の話を、古書店仲間の猫好きのKさんに話したら、彼女は小夏がぎいやん達を覚えているわけはない。と、言う。
「そんなー・・・。自分が産んだ子や父親猫を覚えていたら、大変だよ。そこいら中」・・・確かに。
「だいたいさあー、『私が捨てた子がーーー。』『お母ちゃんっ!』みたいな、ドラマみたいなことがあるわけなかろ。」と。・・・確かに。

しかし、家の猫は何年ぶりかにヒロエサンに会ったとき、彼女を覚えていた。他の友達に対してとは明らかに違う対応の仕方だった。彼女が玄関の上がり框で「ギャオサン〜ナーナーアナーアーナー」と、言うと、家の猫も「ナーナーナーナー」と、くねくねしながら出迎えて・・。勿論、ヒロエサンは家の猫を子供の頃から可愛がってくれていた人間で、血縁関係があるわけではない。もしかしたらあの時家の猫は、ヒロエサンを新種のお気に入りと思ったのかもしれない。