窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

よくある名前

子猫だった太郎達が出没する前から来ていた、大人の猫がいる。
彼は、おそらく「タマ」や「ミケ」と同様にありふれた名前だ。その名は「でかお」

でかおさんは、子猫達がご飯をねだっていると、どさくさに紛れて自分も貰おうと子猫のふりをしている。
しかし、私が近くによると逃げるし、私もでかおさんには出来れば他所で食事をして欲しいと思っている。
でかおさんはたいそう臆病だ。私が動くだけで、ササッと逃げる。

そうして、私が部屋に入るまでじっと待っている。
子猫〔だった)3匹が食べていると後ろで待っていようと努力しているし、皆に睨まれたりすると後ずさりをしたり。
しかし、空腹には勝てなくて、うずうずしながら割り込んでいくと、子猫(だった)3匹も、なんとなく除けていき、結局残りはでかおさんが頂き!というかんじになってしまう。

別に威嚇するわけでもない。ただ、割り込んで食べるだけなのだけれど。そう、でかおさんにとってはその顔が武器なのだった。
私が「ポン!」と言うと、飛び上がって逃げるでかおさん。私が子猫だった3匹を撫でていると、じっと見ているでかおさん。
ウチワのような顔が、以前の家に来ていたアカに少し似ている。