窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

ハーメルン

駅の周りで買い物をして、そのまま家の前を通り過ぎて反対側のスーパーに行こうと歩いていたら、後ろで猫の鳴き声がした。
何匹かが必死の様子で大きな声で鳴いているので振り返ると、太郎とぎいやんが私を追いかけてでてきていた。その後ろからアーニャもトコトコとついてきている。
私が立ち止まって見ていると、一列になっていた彼らも、家から二つ目の角のところで止まってこちらを見ていた。どうやら今のところ彼らのテリトリーはそこまでらしい。そのまま店までついてきたらそれはそれでおかしいけれど。まるでハーメルンの笛吹きのようだ。

今は家から出していない我が家の猫も、子供の頃は出入り自由にしていた。私が仕事に出かける時には道沿いの塀を飛び移りながら追いかけてきて、私の姿が見えなくなる迄ウォーウォーと鳴いていた。
学生時代に飼っていた雄猫は、私が銭湯に行くと角までついてきて、帰りは一緒に帰ってきた。

暖かくなったので、朝の公園の橋の欄干に京塚さんが座っていて、傍らでは小雁さんが、京塚さんが橋から落ちやしないかと多少心配そうに横目でチラチラ見ながら、池の中をのぞいていたりする。小雁さん達を見るといつも、あんなふうにのんびりとお散歩できたらいいのに。と思う。