窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

ドッグラン

少し前の週末、近所の公園で仮設ドッグランができるというので、出がけに立ち寄ってみた。
酒井夫妻とMさんがドッグラン武蔵国分寺の創設のためのメンバーで、今年のお花見にも私はお邪魔したのだ。昨年酒井さん達に骨折仔猫のことでお世話になった時に、初めて私はドッグランなるものを知ったのだが、見るのは今回が初めてだった。


広々とした都立公園の片隅に丸く網で囲われた一角があり、犬と人の姿があったのでそちらの方へ向かってみると、今年のお花見に参加していた人達と犬達がいた。既に午前中にたくさん走ったということで、酒井君(ねも父)の腰につながれたホワイトテリアのねも君は、ポヤヤンとしながらねも父の動きのまま右往左往している。少しすると二匹のゴールデンレトリーバーを連れた人がサークルの中へ。サークルの中にはこんまいチワワやハスキーの仔犬や色々な種類の犬達が、走ったりぼんやりしたり、ぶつかりあったりして遊んでいた。
ねも父が「入ってみよう。」と言うので私も網をかき分け一緒に入ってみると、二匹のゴールデン達がはじけまくって全速力で走っている。「Hey,comoooooon! woh--」と言いながら彼らは連なって追いかけっこをしたり、急ブレーキをかけてまた逆の方に走り去ったり、そんな二匹に巻き込まれそうになったチワワは「なんなの?なんなのよ。皆、走りすぎだわ。キャンキャン」と鳴きながらテコテコと走るのだけれど、小さいからなかなか進まない。
ハスキーの仔犬は「遊ぼうよ、走ろうよ。」と、ねも君に近寄ってくる。でもねも母がさっきどこかへ行ってしまったので、ねも君は「ボク、ボクは、どうしようかな。クンクン、だってお母さんがいないんだもの。あ、自転車が向こうのほうに。なんだお母さんじゃなかった。クンクン」と、落ち着かない。そこへ牧羊犬のような白黒ブチ犬が走り寄り「どうしたんだよ。ほら、遊ぼうよ。」とつついてくる。それで、ねも君は他に気をとられつつも、なんとなく走り出した。
ゴールデン二匹はまるでバスケットボールをやっているアメリカのダウンタウンの少年たちのように、まとわりつき、じゃれあい、笑いながらストップダッシュを繰り返し、チワワは「なんなのよー。危ないわよ。キャンキャン、私だって走ってんのよ。」と言いながらテコテコと・・・・。


私は動物をみると、アテレコをしてしまう癖がある。これだけの犬がいると、もう頭の中でひとり何役にもなって忙しい。昔、近所のノラ猫一家を見ていて、私がいきなり猫達の言葉をしゃべり出したのを一緒にいたヒロエさんに笑われて、自分にそういう癖があることを自覚したのだった。
ノラさんならまだしも、人の家の犬の言葉を私が勝手に話し始めたら飼い主はきっとイヤだろうから、私は走り回る犬達に目を泳がせながら黙って立っていたのだった。


動物が楽しそうに走り回っているのは、見ていてこちらも嬉しくなる。広い公園の中で犬達が使うスペースは本当に小さいのだから、早く常設ドッグランができればいいのにと思う。