窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

お祭り

私が子供の頃は、お祭りは町の人達が総出でやっていた。お神輿の担ぎ屋なんていうのが現れたのは、ずっと後だ。
池袋が近かったせいかそれとも商売柄なのか、入れ墨を背負ったおじさん達も少なからずいた。
その人達が祭りの世話役となり、法被にふんどし姿で昼間から酒を飲んで真っ赤な顔をしながらも、山車や神輿を先導したり子供たちに梨を渡したり(山車を引き終わると梨をもらえたのだ)。
それぞれの町に山車や神輿があったのだけれど、私の生家のある町の山車は網元と書かれていて一番大きく、別の町の小学校へ越境して通っていた私は、お祭りの時は何となく得意な気持ちになったものだった。


大人になってから多摩地区のあちこちに住むようになると、神社のお祭りの他に市民祭りのようなイベントがあることを知った。(もっとも、今の池袋も区民祭りのようなお祭りをやっているらしいけれど。)
そういったお祭りは神輿や山車が町を練ることはなく、広場や通りでフリーマーケットが開かれることが多い。私はどうもそれがお祭りという感じがしなくて、これまであまり行かなかったけれど、Sさん達、ドッグランのメンバーが毎年お店を出していると言うので、今年はちょっとのぞきに行った。
そう、もうあの骨折した仔猫のことで皆さんにお世話になってからちょうど1年が経つのだ。

広い公園には、色んな人達が出店をしていた。ステージではなぜかフラダンスの発表会。美味しそうな匂いが、あちこちのテントから、漂ってごちゃまぜになっていた。
ドッグランのテントでは、古着や食器のフリーマーケットとビールやバーベキュー等のお店を出していて、昼前には長蛇の列で皆大忙しだった。そして少し離れた所には、小さなサークルが設えてあって、ミニドッグランが開かれていた。
入っているのは犬と子供と飼い主達。子供たちが走ると、嬉しそうに跳ねながら追いかける犬、座っている犬がいると、たちまち子供達その犬を囲んで、頭や背中を触ったりしている。それでもその犬はじっと耐えていた(ように見えた)。
サークルの横では、事前に申し込みをした人達が飼い犬のしつけ相談の順番を待っている。悩める親達は多いらしい。


それまで天気の良い公園の中のドッグランの中で、犬や子供たちに目を配りながらもユルユルと過ごしていたSさん夫婦だったけれど、順番が回ってきて相談員の先生の前に座ると真剣そのもの。親子面談。といったかんじ。



しかし、親の心、子不知。




寝ている。
たくさん人がいて疲れちゃったんだよね。