窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

月が奇麗だと、鳥飼からメール。ここ数日、鏡のような月が出ている。今日は満月。家の周りは暗いので庭には月で影ができている。青白く敷石が浮かぶ。

阪神淡路大震災から丸8年。被災した人の多くは、未だに精神的に数々の問題を抱えている人が多いとされている。PTSD。8年も経つのに。と、他人は言うだろう。愛する人や物や街や時間を失った人たちに対して。周りの人間から驚いたようにそう言われてしまえば、彼らは曖昧に微笑むしかない。心の傷を持つのはおそらく後悔の想いからなのだ。と、被災者ではないけれど私は思う。。もし、あの時もっと自分に力があれば。もし、あの時自分がこうしていれば。もしも。もしも・・・と。何かの瞬間にフラッシュバックが起きて、自分を責め続ける。「どうしようもなかったのだ。」と思うことさえも罪深く思えるほどに、残された人たちの心の傷は深い。

PTSDの問題は震災だけではない。サリン事件で公に知られるようになった。勿論戦争でも・・。そんな体験をする人がこれ以上多くならないようにと、私は願う。体験したことがなければその症状を理解しにくいかもしれないけれど、私たちは想像力を働かすことはできる。
アメリカはイラクを攻撃したがっている。空爆でも多くの民間人が死ぬだろう。アフガニスタンがそうであったように。そうして新しい傷を抱えて、この先何年も苦しみ続ける残された人たちが生まれる。