窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

今日、ようやく丸木美術館の安藤栄作展に行くことができた。
安藤栄作展 光のさなぎたち 2013/4/20-7/6

原爆の図丸木美術館 / Maruki Gallery For The Hiroshima Panels


美術館に入り順路通りに進むとそこに原爆の図があった。
絵の前に立つと、原爆の図の画集を食い入るように見ていた子供だった自分、仕事をしている父に問いかけている自分が見えた。
「どうしてこの人は髪の毛がぬけているのか。」
「どうしてこの子はふくらんじゃっているのか」
「幽霊なのか」
「生きているのか」
「死んでいるのか」
絵の中に描かれていた幼い子供たち、抱きあう姉妹、赤ん坊を抱えて放心状態の母親、竹やぶや水の中で苦しむ焼け焦げた人や動物達と再会した。彼らはずっとここにいたのだ。絵の前から移動する次の一歩が重かった。


そして安藤さんの作品のある一室へ
入口に立って全体を見る。原爆の図を見てからそこに立つと、そこは光に満ちているようだった。作品一つ一つが木の香りとともに光を放っているようだった。ここで安藤さんの展覧会を観ることができたのは有意義だった。勿論、他の場所でも何処でも素晴らしい展覧会になったことだろうと思うけれど、丸木美術館でというのは深い意味を感じた。


入口の本のコーナーで安藤さんと貝原さんの絵本を買った。
アーサー・ビナードの写真絵本「さがしています」も欲しかったけれど、重くなるので又今度に。これは先頃講談社出版文化賞を受賞した本だ。アーサーは、来日当時は後書きにも書いてあるように原爆について否定的な考えを持っていないアメリカ人の青年だったけれど、20年以上が経った今は知る人ぞしる原爆も原発も反対の詩人に。
私は彼の講演は聴いたことはないけれど、今度の本はとてもよかった。

さがしています (単行本絵本)

さがしています (単行本絵本)


帰りの電車で思い起こしていて、気づいたら歯を食いしばっていた。顎関節症になってから、歯を食いしばらないようにと言われてその癖を忘れていたのに。