窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

池袋モンパルナス

少し前のことになるけれど、玉井さんから連絡を頂き池袋モンパルナスの会報第12号を送って頂いた。
1ページ目に作曲家間宮芳生氏の今年の2月に発表された「焼かれた魚」の音楽化の際のプログラムに寄せた文章が載っていた。事前の玉井さんからのご連絡は、透土社版の「焼かれた魚」の私のカットをそこに使用したいというお話で、勿論宜しくお願いした次第。それででき上がったものを玉井さんが送って下さったのだ。
池袋モンパルナスについてはネットなどで引いてもらえばわかることだけれど、この号には連載の「雑司が谷墓地探索」(粕谷一希)と「前衛の時代」(桂川寛)等々とモンパルナスにまつわる催しのお知らせなどが載っている。
玉井さんは、元創樹社のあの玉井五一さんで、現「池袋モンパルナスの会」の会長で恐れ多いのだけれども、初めてお目にかかったのは透土社の焼かれた魚が出た頃。数えてみるともう10数年も前のことで、あまり冴えない私の暮らしぶりをいつも気にかけて下さる優しい方なのであった。


生まれ育った池袋界隈を離れてもう久しい。
印刷物やネットで池袋や豊島区界隈のことを目にすると、なんだか不思議な気分になる。
私の中の池袋は、小山や鞄のイノウエや鈴屋や中国画材やWAVEなど今は既に無くなってしまった店、そして南口の公園。
その時間を共有した親友のDは大阪に、Hはフランスにいる。
1年のうち数える程しか行かなくなってしまった場所。他の町と同じようにコンビニや携帯電話のショップができているのを見ると当たり前のことなのにびっくりしてしまう。そして広かったはずの路地の道幅もやけに狭いのだった。