窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

「さよならのあとで」


猫の病院は吉祥寺なのだけれど、これから頻繁に通院しなければならないことを考えて、近所の病院を紹介してもらうことになった。
今日は照会状を受け取りに吉祥寺へ。猫を連れないで行くので身軽。

久しぶりにあちこち行きたかったけれど、まだ目が見えないことに慣れていない猫を、長時間留守番させているのも気が引けて、駆け足で「百年」へ行って夏葉社の新刊と、いつも使っているノートを購入。


夏葉社の新刊については翻訳詩集だということだったので、以前島田さんがネットのインタビューで話していた「DEATH IS NOTHING AT ALL」のことだと思って私は心待ちにしていたのだった。


「さよならのあとで」詩・ヘンリー・スコット・ホランド 絵・高橋和枝
これまでの夏葉社の本のように、クロスや銀の箔押しといった、誰もが一目で「おおっ!」とわかる装丁とは違うけれど、少し肩の力が抜けていて、親しみやすい心地良い装丁だった。
でもカバーの文字も、品の良い赤い小さな花も、皆型押しで、触れると凹凸がわかる。そんなふうに今度の本も愛おしい造りだ。


その詩の全文が夏葉社のHPに載っている。
けれど、頁をめくって目にする一行と、何気ない日常を描いたイラストが
本という形の素晴らしさを教えてくれる。
島田さんのあとがきもとてもよかった。
私はこれから何度もこの本を開くことだろうと思う。


帯には


いちばん
大きな
かなしみに


と、書かれている。
去年大切な人を亡くし、今も大きなかなしみを抱えた、
沢山の人達にも届きますように。