窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

Five minute tales

以前にも書いたけれど、来年の初め頃に編書房から出版される予定の本Five minute tales(邦題は「五分で語れるお話」)のカットは、9月頃から描き始めたのだが、訳が送られてくるのを待っていたら絵が間に合わないかも知れないから原書を読んで先に進めて欲しい。と出版社から原書が送られてきた。前任者の出久根さんもそうだったということだし、子供向けの短いお話ばかりだから読むのは簡単だったので、仕方がないから自分で訳しながらセッセと絵を描いて10月半ばに全部送ったらえらく驚かれた。
あとは翻訳が完成してレイアウトが終わったものを私がチェックしたり、その時点で絵が足りない分は描き足すくらい。

この本は同じ著者マーガレット・リード・マクドナルドでどれも佐藤涼子さんが訳しているシリーズで、所謂ストーリーテーリング本だ。これまでは出久根育さんが絵を担当していたのだけれど、出久根さんは海外に移住してしまったから、ということで、私が引き継いだ形だ。全然違うテイストだけれど。
いずれにしても送ってから随分時間が経ってしまったので、どんな絵を描いたんだったか、だんだん思い出せなくなってきた。
文字とあわせてみた時に、きっと、あーーーー。もっとこうすればよかった。みたいなことが出てくるのだろうけれど。


本棚を整理していたら、10年以上前の小さなクロッキー帖を発見。これは透土社で出版されてた「猫町」の挿画を考えていた時のものらしい。
既にその頃はMacを使っていたと思うけれど、原稿をコピーに取って自分でレイアウトをしてみている。

しかし、全く見覚えの無い絵だ。実際の「猫町」とはレイアウトも挿画も殆どが違う。あの本は苦労して作った記憶は確かにあるけれど、こんなに紆余曲折していたとは思わなかった。あの頃はもっと才能が泉のように湧いてきていたのだと思っていたが、過ぎてしまうとそんな気になるだけで、実は私にはこれまでもそんな時期はなかったのかも知れない。
つい1ヶ月程前の本の仕事さえもうろ覚えになっているのだから、10年以上も前に描いた絵なんて覚えていないのは仕方のないことか。