窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

五分間で語れるお話―もっと聞かせて!短いお話48編

編書房から本が送られてきて改めて見ている。
昔話や民話には、決まって登場する動物がいくつかいる。その中でも蛙。

蛙は以前のなげいたコオロギ―古代歌謡変奏でも出てきた。イソップにも蛙のお話はあるし、日本だと鳥獣戯画の蛙の絵が有名だ。
ところで、実は私は蛙はさほど好きではない。
触ることはできる。小さい奴なら。ツノガエルとかは、見ていると楽しいと思う。ハコフグぐらいに。(多分)でも食べるのはあまり好きではない。
昔、新橋の駅の近くの蛙料理の屋台みたいな居酒屋に連れていかれた時は、形が蛙ではなかったし、「鳥みたいだね。」なんて言いながら食べた。飲んでたし。
しかし、数年前に友人達が、新宿の台湾料理屋で食べたと言う、蛙の姿が見えている料理の写真を見せてもらった時には、その場に居合わせないで心底良かったと思ったものだ。



本の話だった。そんなわけで私はさほど蛙は好きではないのだけれど、お話に出てくるから描かねばならない。

この五分間で語れるお話―もっと聞かせて!短いお話48編の中に、「ミルク壺の中の二匹のカエル」というロシアの寓話が載っている。
原稿を読んだ時には、「ミ・ミルク壺に蛙が浸って〜。」
と、貧血を起こしそうだった。台湾料理屋の写真がすぐに浮かんできた。
私は好きではない物を描く時は、気をつけていないと妙にリアルに描いてしまう癖がある。これをリアルに描いてどうなろう。
そうではなく、愛情を持って親しみを持てるようになるまでは何度も描いてみなくてはならず、机の上は蛙のエスキースだらけになった。
で、できたのはこれ。

お話は、壺の中にカエルが落っこちてしまって
1.諦めたら沈んでしまった。
2.諦めないでいたら、足がついたのに気がついて脱出できた。

という二つの短いもの。

その後にも冬眠している蛙が出てくるお話もあったりして。何匹かの蛙を描いたのでとりあえずクリアした。
とも思うのだけれど、ふと、あのヌルリとした腿足を思い浮かべると、ちょっと寒い。

読み聞かせのためのお話が満載の本だけれど、例えば読み聞かせるだけではなく、子どもと一緒に紙芝居や人形劇にして演じたり、
色々な楽しみ方ができそうな、心くすぐられる本である。と宣伝。



マーガレット・リード・マクドナルド 著
佐藤凉子 訳 市川曜子
税込価格(予価): \1,785 (本体 : \1,700)
出版 : 編書房
ISBN : 978-4-434-12522-5

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