窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

エコール・ド・シモン人形展へ

打ち合わせの行きがけに眞由美さんが出品している人形を見てきた。四谷シモン以外の球体関節人形をこんなにたくさん見るのは初めてかもしれない。
私は関節人形の中で、四谷シモンの人形は好きだったが、最近の他の作家の人形はそれ程好きではなかった。でも、眞由美さんの人形は好きだった。それは何故なのか、よくわからなかったのだけれど。
多分私は人間に近いものを目指しているように感じられる人形はあまり好きではないのだと思う。そういう人形は、まるで生きているかのように精密だったり、美しく化粧をほどこされたりして妖艶だったとしても、制止しているその状態や表情以上のものが私には感じられないからだと思う。わかりやすいコケティッシュな感じだったり、その人形が背負ってきた時間だったり。そうしてその時間は何となく一様に古びていて、それにあざとさを感じてしまうのだ。
眞由美さんの人形は、そういう人形達が持っているある種の圧倒的な強さみたいなものは感じられないのだけれど、中性的な魅力を持った、まさに人形という感じがした。勿論、あるレベルを持った上で。

帰ってから、ミルハウザーの『イン・ザ・ペニー・アーケード』の中の「アウグスト・エッシェンブルグ」を読んだ。

オンライン書店ビーケーワン:イン・ザ・ペニー・アーケード『イン・ザ・ペニー・アーケード』
スティーヴン・ミルハウザー〔著〕/柴田 元幸訳/白水社ISBN:4560071233