窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

啓蟄

このところ、公園を通るとカワセミがいる。今朝は初めてご夫妻で姿を見せた。1羽が水面スレスレに飛行して、魚を捕らえた様子。パチパチパチ。もう1羽は失敗して、橋の向かい側の桜の枝にとまっている。食べ終えた1羽も飛んできて2羽で並んで水面を凝視しはじめた。
あんなに遠くから魚が見えるなんて、目がいいのだ。私も習って橋の上から池の中をじっと見た。その辺りの水は今日は澄んでいる。澄んでいるといっても、池の底には泥や落ち葉が堆積しているのが見えるだけで魚の姿は見えない。なおも見ていると、泥が少し揺れて顔のようなものが現われた。笑った様な細い目をした大きな顔だ。それが、ず・ず・ず・・とはい出してきて止まった。なんだか私の方をみているような気がして、私はそっと身体を右にずらした。すると、その近くの泥の中からもいくつもの顔が表れた。そうして顔達は全身を現し、のそのそと池の底をを這っていった。
また今年もウシガエルの季節だ。泥の中には土色の綱のような卵がいくつもとぐろを巻いている。恐れを知らない近所の子供達が、それを網で掬おうとしている。くわばらくわばら。