窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

チャトラの猫は数が多いとよく聞くけれど、私の家の周りには圧倒的に白黒猫が多い。いわゆるペンギン猫という模様であります。正統派のペンギン猫からペンギン崩れまで。家からすぐの角をまがると、人の姿に驚いて5匹くらいがワラワラと散っていく。そうして皆大きくてたいへん太ってツヤツヤしている。コウテイペンギンのようなかんじ。

道を歩いていて数メートル先に猫が歩いていたりすると、私は口の中で猫の歩調に合わせて「トッ・トッ・トッ・トッ」とつぶやく。私の方が足が早いのでだんだん猫に近づいていくと、猫も私の気配を感じて「トトトトッ」と、小走りになり、そのうち駆け出して塀のすき間からよその家の庭に平たくなってはいっていってしまう。「何もそんなに急がなくても」と私は思いながらムフフと笑う。そんなふうに歩調に合わせてつぶやいてみるとまことに楽しい。