窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

メール便が届かないー2

というわけで、結局交番に盗難届を出しました。まあ、別に戻ってくるとも思わないけれど、門を開けて敷地内に入り、ポストの箱の掛け金を外して盗った、という行為が気持ち悪かったので。


思えば久しぶりに交番に行った。
前に交番に行ったのは、20年近く前。単車に乗ってもうすぐ家。というところで信号無視で捕まって連れていかれたのだ。交番の中はアルコールの匂いが充満していた。その時既に泥酔者が捕まっていて、「どぅわー、すびません、私がわるうございました。とくらあ」と、おじさんが叫びながら土下座をしていた。お巡りさん達はやれやれ・・・と言った顔で彼を囲んでいた。
その前はいつだったっけ・・・。
自転車が盗まれたときだったかな。キリン模様に塗った、自慢の自転車を盗まれたのだった。あのとき。

と、それ以来の交番。
盗難届と言ってお巡りさんと話し始めたのだけれど、結局は遺失物届になった。ポストの中に入っていたのを確認したけれど、次に見たら無かった。というのだと盗難だけれど、配達した人がポストに入れた。のは、ホントだとしても、ポストに入った、その状態を見たものはいない。ということで。
40センチ角くらいの、あの箱に投函されてから箱の底に落ちるまでの、真っ暗の空間。それを誰かが見ていなければ盗難にあらず遺失物也。
私はムロージェクの小説の中の引き出しに住まう小人の話を思い出したのだった。