窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

子猫

昨日の昼すぎころ、それまで物置の中で寝ていたアーニャが、外へ出てきてクルクルと甘えたような声で鳴き始め、陽の当たる腐葉土の上で転がったりして、何やら様子がおかしくなってきた。
タロウやぎいやんが代わる代わるそばに行って、アーニャの頭を舐めたりしていたのだけれど、そのうちタロウは遊び初めてアーニャに猫キックをお見舞いしそうになったので、私が引き離した。残ったアーニャはなんだか少し苦しそうな素振りだったので、代わって私が撫でてやると気持ち良さそうに眼を細めた。とはいえ、いつまでもそうもしていられないので私が立ち上がると、再びアーニャは物置の中に入っていき、続いてぎいやんも入ってアーニャの頭を舐めてあげたりしている。そのうち2匹は並んで寝てしまい、残ったタロウは又腐葉土の上で寝ていた。タロウは大きいので、物置に3匹入れないのだ。


少しして覗いてみると、ぎいやんが眠り込んでいるその横で、アーニャが子供を産み始めていた。
私が外に出るとぎいやんも目を覚まし、縁側に座る私の隣に横ずわりになり、前足を私の腿に載せたままで固まったまま出産の様子を眺めていた。

2匹生まれたところで、市場に買い物に行く時間になったので、部屋に入ると包丁さんから電話がかかってきた。
「2匹生まれた」と彼女に話すと「もっと生まれるんじゃないのかな。」と言う。そうかもしれないと思いながらも、私はそのまま買い物に出かけた。帰ってみると包丁さんの言った通り増えていた。4匹。

生まれた子供を一生懸命舐めているアーニャを、ぎいやんとタロウは物置の入口に座って、恐々とした様子で見ていた。見られているアーニャは別に気にするでもなく、子猫達を舐めている。
母親猫は生まれたときに胎盤を食べて栄養を蓄えるので、しばらく食べなくても大丈夫なのだと、何かで読んだのだけど、アーニャは夕べから子猫を物置に置いたままで、外でご飯を食べたがった。私が覗いても別に警戒する様子もない。

アーニャが外に出ると、子猫が物置からコロコロと転がり落ちた。まだ目も開いていないし歩けないので、ミューミューと鳴きながらあらぬ方向に這っていこうとする。ご飯を食べながらも横目でそれを見ていたアーニャは、自分が食べるのを諦めた。転げ落ちた子猫達をくわえて寝床に戻って1匹1匹きれいに舐めてやり、そのうち子猫達にミルクをあげはじめた。

外に出てきたアーニャがご飯を食べていると、隣で食べていたタロウがアーニャの頭を舐め始め、そのうちアーニャのおっぱいを飲もうとするので、私が頭をはたくと「おっと、いけねえ。ポリポリ・・」といった感じで、またご飯を食べに戻る。まあ、皆1歳半位だと思うので、無理もないかもしれない。大きいけど。
今日になって、ぎいやんがアーニャと一緒にご飯を食べなくなった。無理に隣に寄せると、アーニャに吹くようになってしまった。他の猫の匂いがするからなのだろうか。吹いて私の後ろに隠れる。タロウは全然お構いなしでバクバク食べているのだけれど。ぎいやんの方がアーニャと仲が良かったのに・・・。他の猫の匂いがするからイヤなのだろうか。

ちなみに産まれた子はサバトラ、シロサバブチ、ミケ、そしてどうやらサビ。頭の大きさは中粒の苺くらいだ。