窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

庭仕事の楽しみ

前に住んでいた家は、8坪くらいの庭がついていた。私はそこで野菜やハーブを育て、木を植えていた。
種を撒いて育てたユーカリも剪定を重ねても5メートルくらいになっていて、西洋ニワトコや月桂樹なども3メートルは超えていた。何しろ10年いたので。
それで、引っ越しをすることになった夏の炎天下。貧血を起しつつあらかた木は切って、後は友達に頼んで切ってもらったものだ。その時、もう木は植えまい。庭はもういらない。鉢植えでも植木は最小限度にしよう。と心に誓った。


のだったが・・・・。
今の家は日当たりが良くない。というか、以前の家が東南に何も建っていなくて、日当たりが良好過ぎるほど良好だったのであるけれど、それに比べると、ここは冬は殆ど、夏も数時間当たる程度である。しかも庭らしきものはなく、通路みたいな細い敷地があるのみだ。
そこに、最初から植わっているのが柘植と、なんだかわからん花は白くて黒っぽい実がなりこのあたりではよく見かける、ほおっておくと巨木になる常緑樹。そして紙を作るために以前の庭で植えていたのと同じ種類らしき桑科の木。そして地面にはドクダミと笹がはびこっていた。特筆すべきは、大輪のバラとえんじ色になる紫陽花だ。
まあ、いいや。と、最初は思った。砂利も敷かれているし、石も置かれていて日本庭園風で。と。

でも、ニガウリは食べたいよね。と、去年はニガウリを植えた。細い土地とそこそこの日当たりでも、肥料をいれたためかひと夏十分の収穫があった。
秋口に近所のホームセンターでフェンネルの苗が90円だったので買ってみて、水路の向こう側の幅60センチくらいの・・・たぶん市の敷地に植えてみた。
そちらは私の家の前よりも陽が当たるので、ひと冬越して柔らかな新芽がフサフサとしてきた。春は台所で芽が出たジャガイモを植えたら、花芽がつきはじめた。
ダリアや巨大向日葵の種も撒いてみた。ユーカリも100円で売っていたので、とりあえず鉢植えで育てている。以前の家で庭上から挿し木で鉢植えにしていた月桂樹とクチナシフサスグリを地植えにしてみた。チャクチャクと・・・・・・。
 

チャクチャクと、どこに向かっているのだろうか。
草むしりをしてかがんでいると、タロウとぎいやんが我先にと私の背中に上ってくる。お腹の大きいアーニャは、ようやくご飯の時以外にも撫でさせてくれるようになった。まだタロウ達ほどなつっこくないけれど、ここまで来るのに半年かかかった。


しかし・・・懐かせてどうするのだー。という自問自答と、木を植えてどうする?というのは、なんとのう等しい問いのような気がする。

庭仕事の愉しみ

庭仕事の愉しみ