窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

藤田嗣治展

昨日は近代美術館に藤田嗣治展を観に行った。凄い人かと思ったけれど、そうでもなかった。こういう時代の絵は予備校の頃によく観ていたので、どうしても技法的なところに目がいって顔を近づけてフムフムと、観てしまう。そういえば予備校の時の同じクラスに嗣治に似た絵を描いてる人がいたっけなあ。とか、女性のスカートのレースを面相筆で描いているのがすごい!とか、あまり好きじゃないけれど、家の廊下にあったら凄い迫力だろうなあ。とか。素人だね。まったく。
戦争絵画の辺りが一番混んでいた。「アッツ島玉砕」の絵の前で、老婦人が連れの夫人に「子供の頃に習ったわ。」と言ってアッツ島玉砕の歌を歌い始めたりするものだから落ちついてみられない。私が好きなのは通路の辺りにあった「インク壺の静物」だったけれど、皆素通りしていた。

M亮が「近代は何年か前に建替えたんだったよな。新しくなってから来てない。」と言うので、私は「えー、そうなんだ。そういえば、建替えたって言ってたような。どんなふうになったんだろうねえ。」等と言いながら、見終わってミュージアムショップに行って気がついた。私は2年前に国吉康雄展を観に来ていたのだった。恐ろしいことだ。

今日はNever Let Me Goを凄い勢いで読んで、半分まで来た。なんか妙な話。これってSF・・・。しかしなんというか、面白い映画を目茶苦茶ノイズが入って途中でブチブチ切れる古い映写機で見ている感じで凄く疲れる。古い映写機というのは、つまり私の頭なのだけれど。うう、どうしたって原書で読むんだ。と、昨日三省堂で平積みされていた翻訳本を横目に私がブツクサ言っていたら、「その負けず嫌いの性格に問題があるのでは。」とM亮に言われた。

Never Let Me Go

Never Let Me Go

ABCのサイトのリチャード・パワーズのPrisoner's Dilemmaの原文と柴田先生の翻訳を読むと、日本語って綺麗だなあ。と思う。ダイベックを読んでも、ミルハウザーを読んでも思ったことだ。