窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

茶虎

こなつが縁側に来ていると、茶虎の猫もやって来た。こなつを狙うオスである。まだ若造らしくオドオドしていて、私がガラス越しに見ると家の陰に素早く隠れて顔だけ出している。顔はうーむ。なんというか造作が中心に集中している。そうして頭が小さい。この辺りは頭が小さいのが流行りなのだ。身体は大きくてすらりとしていて手足が長い。
ほどなく、もう1匹茶虎が現われた。模様は白地に茶虎のブチというかんじで、顔が中心に集中していて頭が小さい。先に見えた子と模様違いであとはそっくり。双子だ。やはりオドオドしている。
写真が撮れなかったので、私の印象で説明をすると、例えば昔の西部劇で牧場主の父親が死んでしまって跡を継ぐことになった少し歳のいった娘を物にしようとしている双子の兄弟。といったイメージだ。勿論少し歳のいった娘というのは、こなつのことだが実際はこなつの年齢は不明。茶虎の兄弟はダムとディーと名付けた。どっちがダムでどっちがディーかは今度決めよう。
こなつが動くとダムとディーも焦りながら、追おうとする。焦っているのは私が見ているからだ。こなつを追いたいのに私にも警戒しなくてはならないので、パニック状態で右往左往している。こなつが塀に上って逃げ去ると、ダムもディーもまるで草原のカモシカのように水路の縁を飛び跳ねながら追いかけていった。
私は茶虎の猫が好きだと書いたけれど、頭が大きいほうが好きなのだとわかった。以前の家に来ていたアカなんて団扇のような頭をして、可愛いやつだった。