窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

東京奇譚集

村上春樹の新刊「東京奇譚集」が出て、久しぶりに村上モトクラシを読んでいたら、村上さんはフルマラソンに向けてトレーニングをしている。と、書かれていた。走りながら聴いている音楽の中にキング・カーチスが入っていたので懐かしくなった。キング・カーチスの何を聴きながら走るのかしら。私はキング・カーチスが好きでLPを何枚も持っていたのだけれど、もうレコードプレーヤーもないし、これは売るのもなんだかなー。というわけでチロリアンに貰ってもらった。彼ならそのうちダビングしてくれるにちがいない。と内心思いながら。
それで「東京奇譚集」の話だけれど、やはり上手いなあ。と思う。最近こういう気持ちの良い小説を読んでいなかったのだ。読後感は、夏バテの身体に十分ストレッチを施したような感じ。
読む前から、気になっていたのが最後の書き下ろしの小説の題名「品川猿」だった。というのは、M亮から彼の友達のK氏宅に猿が出たというのを聞いていたからだ。いつだったか、ニュースでも取り上げられていた下町辺りに出没した猿である。その後「○○区でまた猿を発見」というのをラジオで聞くたびにK氏の話を思いだしては私は笑っていた。そうしてある日「猿が捕獲」と新聞で読んで(あの猿かなあ。)と思っていた時、M亮から「K氏から『猿が捕まリました』と、メールが来た」と、電話がかかってきた。これでK氏も一安心だろう。(K氏宅に猿が出たという話の詳細をここで書くと、K氏から私のサイトを攻撃すると脅されているので書けない。)
村上春樹の「品川猿」はそういう話じゃないのだけれど、まあとにかく私の大好きなタイプの小説だった。

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