窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

家探しは続く(その10)

電話では下にアトリエ付きで上に2間という家があるのでというので、不動産屋へ行ってみた。しかし下のアトリエは大家さんが使っていて、貸してもらえるのは2階の2間というアパートのことだった。
他にはこれまで私が何度かチェックしてきた家の中を見られるというので、お願いしたけれどやはり図面で見たとおり狭かったので断念し、もう一件の駅から28分の家を内覧することにした。


家の周辺は雑木林がたくさん残っている武蔵野ど真ん中!!というかんじだ。駅から28分も、天気のいい日は心地よいものだろう。雪が降ったらしんどそうだけれども。
駅から28分といってもそれは最寄の駅ではなく、最寄の駅からは15分。ただ、都心に出るには乗換えがいくつか必要なのだった。それでも今の家より広く、家賃も安いのは魅力だ。

ピアノもOKという床ならプレス機など楽勝だろう。DKもとても広いし、中二階にプレス機を置けば、かなり有意義に使えるスペースだ。
南側には庭もある。が、3方は家が結構迫っている。植えられている樹や草は、日陰に耐えられるものばかりだから、おそらく日あたりは悪いだろう。苔でも作るか・・・。しかし、それよりも気になるのは残されているもの。
オダユウジ風の家に残されていたベッドや家電は撤去されたことだろうが、この庭に残されていたのは、石灯籠と地蔵だった。
地蔵というか、人型がレリーフ上に彫られた変形のそれほど年月は経っていなさそうな石碑が、庭のど真ん中に置かれて部屋の中を見ている。私としてはこれはかなり気になる。
不動産屋に戻ってから、その話をすると、でもこの近くの道にもありますよ。といわれる。
そう、私の今の家の近くにもある。前の家の裏にも地蔵堂があった。しかし道にあるのと庭にあるのでは違うのだ。個人的な地蔵。何ゆえ地蔵が庭にあるのか。私はそれが知りたいのだった。知りたいが知りたくないような、そんな感じではあったが、不動産屋のお姉さんは、とてもいい人だった。私の無理難題にも付き合ってくれて、地蔵の件も先方に質問事項として出してくれた。

その家は保証金となど様々なものを合わせると、最初に払うのは50万くらい。それプラス引越し代など色々と考えると、またもや憂鬱な気分になったが、これをクリアすればあとは普通に暮らせるのだと思い、書類を完成させて明日契約申請をするということで不動産屋を後にした。


家に戻ると留守電が入っていた。今の家の不動産屋さんだった。伝言は何もなくただ折り返し電話をするようにというので、もう夕方だったけれど電話をすると担当者はすでにいなく、又明日かけると言って電話を切った。
なんだろう。もっと早く引っ越すようにというのではなかろうなー。それともどこか見つけてくれたのだろうか。
いずれにしても、敷金の返金と引越し費用を少しは負担してもらえるかどうかは訊いた方がいいと、何件めかの不動産屋の奥さんに助言されていたので、明日契約前に訪ねてみようと思ったのだった。