窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

家探しは続く(その5)

週明けに内覧を申し込んでおいた2階建ての家を朝から見に行く。不動産屋とは現地集合だったが、早めに行って周辺を確認した。
ネットで見つけた物件だ。これまでの中で一番広く80平米弱。そして家賃は今より少し高い。けれど駅からも近い。軽自動車も止められるスペース付き。小庭あり。日当たり良好。
皆が言う「私が探していた家はここだっ!」という家だろうか、なぜ家賃がそんなに安いのか・・・答えは線路沿いだからだ。不動産屋の兄さんに電話でその件を尋ねると「そんなでもないです。ごとん、ごとんっていうくらい」
まあ確認は現場で。
家の前の道は車が1台通るくらい。そしてその向こうは線路。駅の近くだから多少スピードは落とすので到着する電車は静かだが発車していく電車は結構な音なのかもしれない。その家の付近だけ透明アクリル板の簡易フェンスができている。
近所に中規模のお絵かき教室がある。私は銅版画なので問題ないだろう。

そして時間になり、まるで学生みたいな不動産屋のお兄さんがやってきて鍵を開けてくれた。家は申し分ない広さと収納と設備だった。床の間もあって壁に作り付けの本棚が!小躍りしそうな気分のその時、電車が通った。ゴーッ!!やや揺れ。まあ、これくらいは今の家の電車の音に近いかも。

「私ここを借ります。」とお兄さんに言うと、そこの不動産屋は管理はしているが免許の関係で別の不動産屋に仲介を頼んでいるという。車でその不動産屋に向かったが、実は午後から開くのだという。2時間待たねばならないが、オダユウジの家を逃した私は今度こそ先に!と思ってそのくらい待ちます。と、お兄さんに言って車から降りた。
まだ時間はあるから近所を散策してみよう。と、思ったその時に不動産屋の兄さんが息せき切って戻ってきた。
「すみません、最初に言えばよかったのですが・・・実は土日にこちらの仲介を通してもう一人内覧している人がいて」
「えーっ!!えーっ!そんなこと一言も言ってないじゃないですかっ!」
私があまりに落胆したせいか、お兄さんは、
「別に早い者勝ちではないんです。社長の審査なので」
と、付け加えたように言った。
へんじゃん。午後にしか開かない仲介なのに朝から見せて、2時間も待てというのも。へんじゃんへんじゃん。ハナから貸す気がないんじゃないの?
と、突っ込みを入れたくなったけど、とりあえず我慢して待つこと2時間。しかし仲介の不動産屋は開かない。
さすがに頭にきて、不動産屋に電話をしてお兄さんを呼び出した。あやまりながら書類を持って彼はやってきた。実は自分は現場は専門ではなくて、普段はネット管理をやっていて・・云々。そして
「いやあ、仲介の不動産屋さんとはここしばらく連絡がとれなくて、うちもどうしたんだろうと思ってはいたのですが。」
ならば土日に仲介の不動産屋さんを通して、内覧が一人あったというのは、どうやって知ったんだよ。なんで素人よこすんだ!
もうやけくそで書類を書いてとっととその場を後にした30分も経つか経たぬうちに不動産屋から電話があって、収入が見合わないのでご縁がなかったということで。と。
ふざけるなーーーー。時間返せ!と言いたかったけれど言いませんでしたよ。私は。大人ですからね。