窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

昨年も多分今ごろ、隣のアパートとの境にある樹をそのアパートの大家さん達が切りに来たのだったが、今年はゴールデンウィーク前に来た。
ドスドスと音がしたので、下に降りて行くと3人の人影あり。見上げると家の2階の雨どいをひっかけぎみに枝を伸ばしていた樹の姿がそこには無く、枝を落とされた棒の様な姿で私の背丈より少し高いくらいの高さに切られ、さらに揺れている。
塀の上からのぞくと、大家さんが地面に座って根元から30センチくらいの所にのこぎりを入れてまさに切っている所。

「あーーー、切っちゃったんですね。こんなに」と、私が言うと、大家さんの奥さんが「遅いっ!貴方がこの辺で時々切ってくれるんだったら切らなかったのに。」と、幹を指さした。
「やりますよ、そのくらい。」と言ってももうすでに根元は半分位のこぎりの刃が進んでる。私が「あーー。」と残念そうに言うと「もっと早く言ってくれりゃあいいのにぃ。」と叱られた。
「何の役にも立たない樹だからね。このイヌなんとか(何だか忘れた)は。」「もう私たちも70歳だもの。切っておかないと大変なのよ。毎年不思議なことに皆で歳とるんだからー。」と、奥さんが笑った。
樹はネズミモチではなかったようだ。でも、「イヌなんとか」と大家さんの奥さんが言ったら「そうじゃなくて、○○だ。」と、ノコギリをひく音にだんだん力がなくなってきた大家さんが下の方で息絶え絶えで言ったのだが、私はよく聞こえず。結局正式名はわからなかった。


切った樹は細かくして捨てに来る。と言っていたけれどこれはかなりの重労働だろう。そのまま放置されている。

凄い生命力だと毎年感心していた樹も、こんな切り株となってしまった。

今年の夏は西陽がきつそうだ。昨年植えたユーカリの伸びを期待したい。やや恐れもありつつも。