窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

秋の次に春が来た。
それでも我が家は寒い日もあって値上がりした灯油代がかさんだ数ヶ月だった。
灯油屋さんの笑瓶は、使っている青年(31才)に90万ほど持ち逃げされたのだとこぼす。
親に話をつけて、お金はもどってくるそうでひと安心とのこと。その青年はとある地主の一人息子なのだが、キャバクラに通いサラ金地獄で、両親は家を売り払って青梅に引っ越してしまったとそうだ。
しかし・・・・灯油屋さんからそんな話を聞かされる私は、相変わらずの道訊かれ顔なのだろうか。と、やや不安である。


いずれにしても暖かくて、近所の公園には鵜が来ていた。
マスクをした花粉症らしき老女と私が橋の上からのぞき込んでいると、彼は(彼女かもしれないが〕エサを探しながら得意げに池の中をつぃーっと潜水をして、向こう岸に上がって身繕いをしてる。常駐組のカルガモ夫妻は、あっけにとられた様子で、池の隅っこに波も立てずに浮かんでいた。