窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

宮原清の世界


同級生の宮原氏のこれまでの銀座での仕事を観ることが出来るというので、M亮と一緒に恵比寿へ行ってきた。題して「宮原清の世界」
宮原氏はアトリエ・あいの代表でディスプレイデザイナーだ。勿論、私はこれまでの彼の仕事のいくつかを知ってはいたけれど、本人のコメントを交えながらスクリーンに映し出された作品とそのキャプションの年号を観ながら、私は「ああ、これはあの頃か。」と、おそらく会場に来ている業界の人とは違う感慨にふけった。
卒業後の彼は「忙しい」という言葉といつもセットだった。毎年、年末にある同級生10数人での会合にも、仕事を収めたばかりだったりまた翌日から怒濤のような現場だったりで、ヨレヨレになってやってきた。忙しくて姿が見えないときには、誰かしらが得てきた情報からその仕事の断片的な話が漏れ伝わって、よくわかっていない私たちは「ふーん、大変だなあ。」と言いながら、登場するのを待ったものだ。

その日は、彼が手掛けた「銀座の仕事」ということで、80年代のアルビオン化粧品のショーウィンドウから、最近のミキモトのウィンドウまでが紹介された。それらのどれもが学生時代の友人達にはお馴染の、宮原氏が描いてきた漫画の世界と繋がっていた。彼の卒業制作の漫画の本の世界や連協のライブのチラシや「びーとるず君」や。
彼の仕事を年代順に観ていくと、その手法が徐々にアニメーションというものに変貌していったようにとられるようだけれど、私には彼の仕事が出発点に到着して、また始まるように思えた。
会場を出るときに私が思い起こしたのは、T.SエリオットのLittle Giddingの1節だった。(We shall not cease・・というあれ)それを宮原氏に伝えると、かみしめます。とメールが来た。朝の5時に・・アシカ君はどこまでもアシカ君なのだった。

友達がいい仕事をしていると、私も元気が貰えて嬉しい。

あとりえ・アイのウィンドウディスプレイのページ

アニメーションも観られると嬉しいのだけれど、今のところ掲載されていない模様。