窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

モニタ

駅の近くに足裏マッサージ屋がある。駅周りは再開発がとん挫したままで、道路もどれがメインストリートなのか今となってはわからない状態だが、マッサージ屋のある通りは明らかに裏通り。もしくは抜け道。潰れてしまったスーパーの看板がそのままのビルにはスポーツジムがあるくらいだ。10数年前は勿論スーパーも健在で、周りには市場のような商店が並んでいた。それぞれの建物は今ほど立派ではなかったが、夕方になると買い物客であふれていたのだ。今は昔・・・・。

そんな通りにある足裏マッサージ屋のウインドウに、半月ほど前から大型のモニタが設置された。ウィンドウの上には「頑張れ日本」の文字。勿論ワールドカップにむけてである。モニタの前にはビニールがかかったままのサッカーボールと、スパイクがディスプレイされている。スパイクは角度が付くように、踵の下には黄色いおしぼりが丸めて台代わりに置かれている。モニタが設置されてすぐにウィンドウの外側には茶色い箱が置かれた。さい銭箱かと思ったらスピーカーだった。

その数週間前に、向かいにあった閉店してしまったひなびた酒屋件食料品店は取り壊されてしまい、更地からコインパーキングになった。ラーメン屋や飲み屋はポツポツとあるのだけれど、昼も夜も人通りは多くない。そんな場所にモニタの出現である。
日中私が通るころにはワイドショーがついていて、足を止める人もいない。
夜中にモニタはついているのだろうか。サッカーが始まる時間になると、私はあのモニタを観ている人がいるのかが気になって仕方がないのだった。