窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

編み物

 昨日偶然上京して、ライブに来たDは我が家に泊まり朝まで二人で話し込んだ。何年ぶりだっただろうか。朝まで話して彼女は午後に帰っていったけれど、夜にまた電話があって「まだ話したりないね。」とお互いに言った。学生時代もまだ池袋近くに住んでいた私と彼女は大学への行き帰りや休日にも会っては長い時間一緒にいた。いったい何をそんなに話していたのか。その内容は殆ど覚えていないけれど。卒業してすぐに東京を離れたDにとって、夕べは20年ぶりに会う友人達が殆どだったので、普段彼らと会っている私とは違った感想を抱いたようだった。圧縮されピュアな印象。そうして、それらはまるで占い師のように的確で私は驚かされた。

 夕べは寒くなったので、Dに私が編んだカウチンカーディガンを渡すと「ヨーコが編み物が上手いなんて知らなかった」と、目を丸くして感動していた。昨日履いていたスカートも私が編んだというと、さらに感動した様子だった。Dは私が作ったダイニングの机を見ても感嘆の声をあげていた。いいなあ。女友達って。先日M亮に「このスカート私が編んだんだ。」と自慢しても、彼は「ほう、どうりでボコボコしていると思った。」と言い、アシカ君は私の作った机を見ても「おう、おう。」と言っただけで別のことを考えている眼をしていたものだ。

 家の猫はDがいる間、階下に降りてこなかった。朝、Dがトイレにいる間に連れてきてご飯を食べさせた。姿が見えなくても人の気配を感じて脅えていたけれど、ご飯に好物の海苔をかけてやるとガツガツと食べ始めた。しかし音がすると食べながら腰が引けてきて、彼女がトイレから出てきたら一目散で上に上がっていった。