窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

シーサー

 「近所で駐車場の工事をやっているんですが、お宅の屋根を見たらけっこう痛んでいるから・・」と、工務店のつなぎを着たお兄さんが訪ねてきた。ここは借家だから。と言うと少しがっかりしたような顔をしている。それでもどこのことを言っているのか、を教えてもらった。鬼瓦の下の漆喰が痛んでいて云々・・・。ほおっておくと雨漏りするから。と言う。ホームセンターで2000円位で漆喰を売っているから、それで自分でもできるからやっておいたほうがイイですよ。塗る用のこういう形の道具も売っているし。と、お兄さんは手でコテの形を説明し、滑らないようにこういう底の靴履いて。と、自分のゴム底のズックの足の裏を見せた。私は「フンフン」と黙って聞いていた。そうしてお兄さんは、周りの家の屋根を見上げながらブラブラと帰っていった。
 今度の家は一応ちゃんとした「家」なので、そういう訪問が多い。以前も「このままでは下水道に土が溜まって云々・・・。」という業者が来た。この人たちは、チームを作ってワゴンで家々を回っていたようだ。そんなふうに脅かして工事を請け負い、法外な金額を要求するらしく、市報にも注意を促す記事が載っていた。私の場合はたいていは「ここは借家だから。」というと、帰っていく。

 しかし、実際に屋根が多少怪しいのは越してきたときにわかっていた。和室の押入れからそよそよと風を感じるときがあったからだ。それで一応バードウォッチング用のグラスをとりだして屋根を見てみたけれど、よくわからない。ネットで瓦屋根のことを検索してみた。瓦屋根の工事については色々ヒットする。「漆喰は10年が目安です。」というのもある。まあ築40年だったら色々と問題も生じることだろう。家の屋根は普通の瓦屋根なので漆喰は鬼瓦の辺りに見えるだけだが、ネットの中に沖縄の屋根の葺替え工事の画像を見つけた。紅い瓦と漆喰の白が美しい。そうして勿論シーサーが乗っている。屋根をなおすのならこれだ。と私は思う。まずは屋根用のシーサーを買おう。シーサーの顔にも色々ある。お気に入りを見つけるためには、やはり沖縄に行かなくてはならない。道のりは遠い。