窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

 死んだ人の夢を時々見る。私は彼と青山の喫茶店で待ちあわせていた。ずいぶんと遅れて彼がやってきた。なんだか疲れている様子だった。「この人が死んだNちゃんなんですよ。」と、私は喫茶店のママさんに紹介をした。彼も「こんにちは。」と、挨拶をした。程なくして店を出ると、青山だと思っていた店の前は以前住んでいた坂のある町で、私たちは並んで坂を降りていった。「なんだか元気が無いみたいだね。」と、私が言うと彼は「こうやって出てくるたびに痩せちゃうんだ。」と困った顔で言った。「えーっ?それじゃあ、逆牡丹灯籠じゃん。」と私が言って隣を見ると、彼はいなくて見覚えのある歪んだコンクリート塀があるだけだった。コンクリートの継ぎ目からはみ出した雑草を見ながら(例えが古くて彼は気を悪くしたのかもしれない。)と悔やんでいるうちに目が覚めた