窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

鳥ー酉

 来年は酉年だ。年賀状の季節。
 鳥といえば、ロンドンにいる鳥飼から葉書が届いた。その前に英文メールも来た。向こうのパソコンのエンコーディングの方法がわからないのだそうで、仕方なく私も英文でメールを書いた。その後に届いたこの葉書は勿論日本語で書かれているので、なんだか妙な気分だった。葉書はロンドンのポストカードで、赤毛のパンク頭の若者の写真だ。「今はもうこういうファッションの人はいないらしい。」と、書かれていたが、私が学生時代に大学の美術館巡りツアーでロンドンに行ったときでさえすでに居なかったので、おおかたこれはポストカード用にモデルを使って撮ったものではないかと思われる。彼らは長い髪を塔のように立てているのだが、元から硬めの毛でなければ、こうはいかないだろう。私は猫毛なので硬めのDEPを使っても無理であった。
 鳥といえば、今日初めてキビタキが訪れた。しかし、彼は四十雀一家よりも警戒心が強くて、部屋の中にいる私の気配を感じてすぐに飛び立っていってしまった。山吹色の胸がとても美しくて、私は飛んでいってしまった後も名残惜しく見ていた。以前このあたりに住んでいた頃には、尾長の姿をよく見かけた。当時の家の裏手の神社に朝行くと、青い尾をした尾長の大群がお堂の屋根に集まっていて夢のような光景であったが、尾長の声というのは濁点がつくような声だったので、見ほれるというよりもその声に驚いたものだった。