窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

ハケ

 さて。新しい家の軒先に、数日前に猫が1匹やってきた。まだ子供で、模様はメガネザル模様(顔は猫)。どこかの飼い猫らしかったけれど警戒心は強そうだった。網戸ごしに見ている私の顔をいつでも逃げられる態勢でじっと見ていた。その時、家の猫は部屋の中に居たのだけれど、あいかわらず私に文句を言うのに一生懸命で、外の子には気づかない。外の子は家の猫のブイブイと言う声に驚いた様子で、それでもしばらくはじっとしていた。しかし、私が身を乗り出すと、踵を返してどこかへ消えていった。
 夕べは仕事の帰りに打ち合わせで、家に戻ったのは夜中12時近かった。家に着いてから雨風がさらに強くなり、外の木が軒をこする音が夜中じゅう聞こえていた。
 今日は午後から気持ち良く晴れていたので、洗濯物もよく乾いた。軒下の砂利も雨で洗われて奇麗になっているのだが、縁側に泥が点々と跳ねている。拭いておこうと雑巾をとりだしたら、泥の跳ね跡だと思ったものは猫の足跡だと気がついた。小さな足跡は、縁側一帯についている、いつも開けている窓の前が一番多い。夕べ雨の中にやって来たのか、今朝来たのかわからない。
 家の猫は気配を感じているのだろうか。ここ数日は、引っ越した当初のように外を見て意味もなく吠えることはなくなり、鼻をひくつかせている。