窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

祭り

 昨日、今日とこの辺りは秋祭りだった。家をくくるように、神事の縄が張られた。家の前を神輿と山車が通っていったのだけれど、新興住宅街化したこのあたりでは、引き手や担ぎ手がいないのだろう。山車は法被を着た年配の人たちと、周りをぶらぶらと歩いてくる子供連れの若い母親の何人かが短い綱をもっているのみ。神輿に至っては、係の人と子供が担げずに下に持ってのんびり歩いている。信じられん。
 私が生まれ育った町の祭りは、今思うとかなり大きいものだったようだ。今は確かプロの担ぎ手も入ってきていると聞くけれど、私が子供の頃は、同級生や先輩やその町の大人たちが神輿を担いでいた。職人さんや商店街の人たち。普段は黙々と働いている人たちが、その時は大きな声で指示を出し祭りを進めていた。そうして、祭りの期間中、皆酒臭かった。職人さん達以外でも刺青をしょった人も何人かいて、彼らも神輿を担いでいた。その中には中学の先輩もいたりして、彼は普段もそのままそちらの世界の人だった。