窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

風呂

 ようやくお風呂の工事が始まるので、早朝猫を美容院へ預けに行った。美容院の3匹の猫達は、興味津々でゲージに入れられた私の猫を、代わる代わる覗きに来る。皆フレンドリーなのだけれど、家の猫は心細げに鳴いている。業者の人が来るので、猫を置いて私は家に戻った。
 お風呂工事は順調に進み、夕方にはタイル貼りを残すのみになって、また明日。私は猫を迎えに行き、そのままカレーライスを呼ばれた。猫は、大人しくゲージの中に入っている。美容院の3匹の猫も家の猫の愛想のなさに飽きたのか、もうゲージの所には寄っていない。ご飯を食べ終えて猫を連れ、美容師さんと一緒に家まで戻った。家に降ろすと猫は走りだした。「鳴かないね。」と、美容師さんは言って、しばらくみていたのだけれど、猫は無言で尻尾を立てて階段を上り下りしていた。
 彼女が帰って、猫はご飯を食べて毛繕いを始めた。私の顔をみて安心したように目を細めている。このまま大人しくなってくれればいいのだが。そう思いながら、私はパソコンに向かっている。猫が階段を下りていった。そうして、またウシガエルのような声で鳴き始めた。