窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

引っ越し

 引っ越すことにした。ダンボールに本を詰め始めた。しかし、まだ行く先は決まっていないし夏中にやるべき仕事もたくさんある。が、もう荷造りを始めてしまった。ココへ越してくるときも家が決まる前の何ヶ月もの間、私は早々に荷物を詰め始めてしまいダンボールに囲まれて暮らしていた。食器などもしまってキャンプ道具で生活をしていて楽しかった。当時遊びに来た友人には、かなり変だ。と言われた。当人とてダンボールに挟まったまま朝まで呑んで帰ったくせに。

 本を詰めながら、この家の荷物の1/3は本が占めていることが改めてわかった。秋田産の西瓜2個入り用のダンボールを沢山もらってきて、それに本を詰めている。箱は今のところ10個。本棚各所にあと3倍は本がある。
 箱には西瓜の絵がプリントされている。この中が本当の西瓜だったら。と、ふと思う。考えただけでお腹が一杯になる。私はそれ程西瓜は好きではないのだ。
 青山ブックセンターの存続のためのネットによる署名運動があり、私も署名をさせてもらった。ああいう書店が無くなってしまうということは、大手ではない出版社にとってのほうが打撃だろうと思う。私自身も昨年朔北社から出版された詩の絵本の原画を、ABCと朔北社の取り計らいで展示できたのだ。そういった原画を飾るスペースや、トークショーが開かれるような広めのスペースをもっている書店はあまりないからな。と、編集者の友人が言っていた。
 ビジネスがうまくいかなかったのには、それなりの理由がある。と、別の友人から返信メールが来た。それはそのとおりだ。ただ、書店というのは、ビジネスだけではないものも含まれていると思う。でも、現実的にはそれでは成り立たない。書店がなくなることは、その町が別の方向に舵を切るのかもしれないと書いたけれど、おそらく町のことだけではないだろう。