窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。


最近クロさんが庭にやってくる。流れ者のクロ。などと何年か前に言っていたのだけれど、実は流れているわけではなくて出会う場所はだいたい決まっている。彼の子供たちはどこにいったのか。その中には確か1匹だけ真っ黒い子がいたと思うのだが、子供達は別の場所へ移動していったのかもしれない。よって、この界隈では黒猫は、新築の建て売り住宅のどこかで飼われているらしい気品のある黒い子猫を除くと、このたくましいクロさんだけである。逆光だからよくわからないけれど、顔はけっこうかわいい。

これは、室内の家の猫を見ているところ。このとき家のギャオスは唸りながら後ずさりをしていた。茶虎の猫好きのギャオスは黒猫なんてもってのほか。大嫌い。ってかんじで、怒りまくっている。先日も、窓際で無防備に寝ていたところにクロさんがいきなり登場したものだから、ギャオスは驚きのあまり網戸をバシバシ叩いて威嚇していた。クロさんは、そんなことでは全く動じずに、のそのそと縁側に上って鼻面を網戸につけたものだから、ギャオスは唸りながら退散した。

クロさんがいると、ハケも大ちゃんもやってこない。もしかして、嫌われ者?でも、数年前には彼には家庭があったのだ。妻と4匹くらいの子供達を連れて、近所のブロック塀の上にたたずんでいたのだから。妻子はどうしたのだろう。逃げられてしまったのかしら。ややガニ股気味に庭から出ていくクロの後ろ姿は多少哀愁が漂っていた。なーんてね。