窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

台風が近づいているらしい。朝のうちは霧のような雨が、幾重にも重なって、窓から見える遠くの建物は靄っていた。畑の向こうを紅い傘をさした人が自転車で通った。私は傘をさしながら自転車に乗ることができないので、感心してしまう。一体、自転車に乗って傘をさしていて、濡れずに済むものなのだろうか。傘をさしている人は、どうやら皆私のように前傾姿勢でむやみにスピードを出していないようだ。姿勢良く、ゆっくりと。

気温も低くなって、長袖を着ている。まだ暑いときから聞こえていたコオロギの声も、午後からの強い雨音でぴたりと止まった。

「戦後名編集者列伝」(櫻井秀勲著/編書房)が出来上がった。装画は私の銅版画である。原稿を読んで、このイメージになった。サイトのバナーに使っている、「湖」という作品の手法だが、意味合いはかなり異なる。
「戦後名編集者列伝」は、副題にー売れる本づくりを実践した鬼才たちーとある。詳細は編書房のサイト新刊情報で・・・

ところで、久々に外猫の話。といっても、庭に来る猫は最近めっきり少なくなった。9月に入ってハケがぱったり姿を見せなくなってしまった。近所でもみかけない。元気そうだったのだけれども、毎晩やって来る新顔と最近大きくなってきた大チャンに毎晩のように、フーフー、ムームー、ブーブー言われていたので、どこかへ行ってしまったようだ。アカもいなくなり、ハケも。時代は変わる。

ハケに少し似た猫が登場するドラマ「すいか」が今日で最終回だった。私の好きな出演者ばかりだったので、めったにドラマなど見ない私だが、これはけっこう見ていた。あんなふうな賄い付きの下宿に住んでみたいが、どちらかというと大家側かもしれない。
 賄い付きではないけれど、今日は大家さんが畑でとれた小松菜をくれた。昨日は、庭に人影があったので出てみると、隣の奥さんが頂き物の梨を置いていってくれようとしたところだった。庭の青い机の上に、ミニトマトやキュウリ、茄子やニガウリ等を置いていってくれるときもある。私はといえば、今年は初めてピーナッツを植えたで、収穫できるといいのだけれど。

戦後名編集者列伝―売れる本づくりを実践した鬼才たち

戦後名編集者列伝―売れる本づくりを実践した鬼才たち