窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

編書房の國岡さんに表紙の絵を渡す。私の家が狭いという話をすると、いっそのこと視点を変えて神保町の古いビルなどはどうかと言われた。けっこう安いのだそうだ。しかし、そういうところは住居には適さないだろう。そのようなビルの中で黙々と版画を作っていることを想像してみる。その場合、寝るのはどこになるのだろう。プレス機の横にハンモックを吊るしたりして。毎晩神保町界隈の編集者友達と飲み歩く生活となるに違いない・・・。やはりやめておこう。
私は都会に生まれ育ったのだが、思えば既に半生は武蔵野地区で暮らしている。大学時代は、高尾の山から中央線に乗って新宿に近づき、ネオンが見えると心底ホッとしたものだったのに。今では、お寺の鐘を聞きながら、縁側に豚の蚊取り線香なんぞを置いてほおけている。「日本の夏」

一体自分にはどういう場所が適しているか、わからなくなってくる。勿論、庭に大きな木がうっそうと茂っていて、広く風通しの良い平屋で廊下も床の間もあり天井は高く梁があり、壁は漆喰で、仕事場は三和土になっている、それでいて都心に建っているという家がが好ましいのだが・・・。チェーンの饂飩屋という様子かもしれないが。

この夏は、友人達のお宅拝見をしてみようかと思う。やれやれ。どこでどう道が違ったのかわかりませんが、みんな良い家に住んでいるんですよね。これが。