窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

コラーゲン

茹でる前

先週は、約束をたがえることが多かった。初日だと思っていた展覧会が終わっていたり、数十年ぶりに集う友人のパーティに出なかったり。

アトピー気のある私は、この時期は悲惨な状態だ。今回は顔と、それから頭も危ない状態だ。洗うだけで痛い。吸い取り紙のように水が吸収されてしみる。少しすると顔全体に1ミリ位の感覚で縦に皴が入った。殆ど70代の顔だ。いや、70代でもこんなに皴になっている人はいないかもしれない。しばらく薬をつけてしのいでいたが、やはりここはコラーゲンを取らねばと思い、初めて豚の耳を買った。まるごと。
買ったときは冷凍されていたので、固くて「物体」という感じだったのだけれど、解凍したらふにゃふにゃと肌触りの良い薄いピンク色の耳だった。下処理(毛をとること)はされていたので、大きな鍋に2つの耳を丸ごと入れて茹でたら少し小さくなった。表面のゼラチン質がプリプリしている。

小さくなってもまな板の上に置いた耳は当然耳の形をしているわけで、私は包丁を持ったまま台所をグルリとまわった。しかし、とにかく形を無くそうと先の方から千切りにしていった。1度は味噌和えにして、次はお醤油とお酒で煮て煮こごりを作りラーメンに入れて食べた。多少しつこいけれど、なかなかいける。残りも千切りにして冷凍した。これからは、南国の市場などで豚の顔を売っていても平然としていられることだろう。そう頻繁に食べたいとも思わないけれど。
顔の方はおかげでだいぶ回復したが、まだ湿疹だらけで予断は許されない。