窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

終日版画。終日と言っても、行き詰まって部屋の中を行ったり来たりしてる方が多い。刷りに入っているので、手に絵の具が付いているから息抜きに他のことをするわけにも行かず、珈琲を飲みながらウロウロしたりして。

朝青龍が優勝。横綱になるそうだ。高校時代の映像が流れている。まだ痩せていたけれど、すでに目は細かった。
相撲のことばかり書いていると、よほどの大相撲ファンのように思われるだろうが、そうでもない。ま、普通だと思う。とはいえ第30代木村庄之助が今場所で引退だとアナウンサーが言うので、つい見入ってしまった。行司の衣装はすばらしい。中央に立ってパラリと軍配の紐を垂らすのも型なんでしょうね。カメラの端々に映る呼び出しさんたちの姿も風情がある。じかに見たらもっと奇麗だろうと思う。でも、相撲よりも歌舞伎を見たい。

10数年前、私が模型作りのバイトをしていたころ。バイクに乗って模型の材料を買いに銀座の伊東屋に行った。伊東屋の裏手にバイクを置いて歩いていると「市川!!」と呼ぶ声がした。振り向くと作務衣を身に付けた背の高いお兄さんが笑っていた。10数年ぶりに会う中学の同級生の保科幹だった。訊けば彼は歌舞伎座の大道具をやっているという。立ち話をしている間にも、女形の役者さんたち何人かが彼に会釈をして通り過ぎていった。歌舞伎に行きたいと思うとき、いつもその時の保科君の大笑いをしている顔を思いだす。彼は私のバイク乗りの格好を見て、伊東屋の前でウヒャウヒャと大笑いしたのだった。