窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

家探しは続く(その12)

段ボールから本や食器を出して棚に入れて、箱をつぶして黙々と束ねる。週明けまで段ボール箱の回収はないので、家のあちこちに立てかけてある。
なんだい、この無意味な作業は・・・。
徒労という言葉がふさわしいけれど、おかげで多少の本と服を処分することはできた。もっともそれは古本屋でいつでも手に入るような文庫本ばかりだけれど。


あの日今の家の不動産屋へ行き、ようやく担当の人に会った。
そして事務所の椅子に座ると、担当者は言ったのだ。
「大家さんから昨日突然電話があってね。取り壊すのを止めたって。」


理由は聞かなかった。とにかく今の家に住めることになった。シロアリ対策は後日打ち合わせに。もしもひどい状態だったら結局越さねばならないのかもしれない。
一抹の不安を抱えつつ、契約寸前だった不動産屋を訪ねて理由を話して断った。その不動産屋のお姉さんも脱力した表情だった。先方にあやまりの電話を入れてもらって振り出しに戻った。

振り出し・・・。なんの振出しだろう。
私はいずれにしてもいつかまた家を探さねばならないだろうから、その振り出しなのか。


さようなら、地蔵と玉川上水。毎朝上水沿いを28分歩いて痩せる計画はおじゃんになった。
まあ、別に今の家でも歩く所はたくさんあるけど。
もし数年後、家探しが又始まった時、地蔵の家が空いていたら、私はまた申請をだすかもしれない。もしそんなに長く空き家になっていたとしたら、それはそれで少し気になるけれども。