窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

麒麟

先日、といっても少し前だけれど。
日本橋に行った。

日本橋は架橋100周年とかでクリーニングをして、確かに綺麗になっているようだ。
久しぶりに来た私にも解るくらいに。


目的の物はこれ。橋に座っていた麒麟がここに。

ドボチョンが手がけたウインドウディスプレイだ。
麒麟ビールの麒麟よりなんだかちょっと愛らしい顔をしているような気がする。
ドボチョンが描いている絵の世界に通じる物がある。
もう一つのウインドウには獅子がいた。どちらも大きくてびっくり。


日曜だったせいか人通りも殆どなく、そしてビルの向こうの空が皆四角くだだっ広くて何だかホッとした。しかし、今、都心に来てホッとするとは思いもしなかった。
そう言えば大学の頃、私は2年まで自宅の椎名町から通っていたのだけれど、その頃は山の中にいるのが嫌で、早く都心に戻ろうと授業が終ると当時池袋に住んでいたDと一緒に中央線に駆け込んだものだ。新宿近くなって街の灯がみえてくると、まるでネオンに誘われるオジサン達のように二人でホッとしていた。そうして帰りにあちこちのブティックやら鞄屋やらを見て歩き、安い喫茶店で話し込んでいた。昼間も一緒にいるのに一体何をそんなに話していたのか。それは忘却の彼方。