窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

梅雨



7月に入ってから本格的な梅雨空だったのが、どちらかというと大雨の様子だ。雨の日は猫も眠いらしく朝からぐずっている。
 家の猫は「ぐずっている」という場合、べたべたと張り付いてきてグルグルといつまでも言っているのだ。そうしてそのうち、大きな声で鳴きだす。張り付いているのだからそんなに大声を出さなくても良かろうと思うのだけれど、小さい声で鳴けないらしい。
 張り付いているというのは、私の体にしがみついてきたり、頭の上に乗ろうとしたりするわけなのだけれど、無理やりはがそうとすると爪を立てるから、撫でながらするすると床に落とすようにする。そうすると、何事もなかったように階下に降りていき、また吼えている。
 いったい、どうやってこんな猫ができたのか。といえば、幼いころにあちこち放浪したからなのだろうけれど、だいたい私がこの猫が捨てられていることに気がついたのがこの声の大きさからなのだから、生まれつきなのかもしれない。
 子猫の頃はこの猫も大人になったら、以前の猫のように私の話すことがわかり、じっと聞いているような利発な猫になるだろうと思っていたのだけれど、10年経った今は、私の方が猫の話を聞かされているのだった。そんなに必死で叫ばなくても聞こえてるというのに・・・。