窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

ストーブ

この数日間、あまりに寒くて思考停止状態になり、やはり暖房器具を買わねばと思った。20年来使用していた小さいストーブは、猫が一匹暖まるのにはちょうどいい大きさだけれど家全部は無理だ。そこで私の生活環境と似ている丹羽氏の助言を得て、大きめの石油ストーブをネットで買った。これはまるで昔、大学のアトリエにあったような対流式のクリーム色のストーブだ。
 当時の大学は斜面に建っていて、私たちのアトリエはその斜面を掘った所にあり、言ってみれば半地下。壁はブロック、屋根はスレートぶきで天井がとても高い。今から考えると信じられない造りだ。そこにこの対流式ストーブが2,3台あった。しかしつけていてもストーブの周りに集まった皆の吐く息は白かった。アトリエはいったい何度くらいだったのだろう。水道は凍りつき逆さにつららがはえていた。

 注文していたストーブが今日届いた。これで寒さから解放されるのだろうか。重い。持ち運んだだけで暖かくなった。
 話には聞いていたが、凄い火力だ。家が燃えそうな勢いだ。上にヤカンを乗せてはいけないと書いてあるが、乗せてみるとすぐにお湯が湧いた。もったいない。お風呂も沸かせそうだ。学生のころは、ストーブの上で乾燥芋を焼いたりしたけれど、このストーブではあっという間に炭になるだろう。肝心の暖かさだが、今日は気温が高いので暖かいのは当然のような気もする。対流式は最初は上の方に熱が行くため、背の低い猫にとっては多少不利なようで、そばに座布団をよせてやっても今までのように横にならずに、炎の窓に向きあって肩をいからせて座っている。慣れなくてまだくつろげない様子。