窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

玄米食べたい

 このところヒロエサンとメールで台所物の話をしています。主に鍋の話です。鍋の話はつきません。お互いに欲しい鍋が沢山あるからです。彼女は圧力鍋を欲しがっています。私は、10年近く前に買った安い圧力鍋持っています。それでも、玄米は美味しく炊けます。ヒロエサンとメールをやりとりしているうちに、久しぶりに玄米ご飯を食べたくなり、駅前のスーパーの中に入っている自然食料品店にいきました。
 越してから、何度か店先を見ていたのですが、買い物をするのは初めてです。そこは、お米の種類も豊富で、天井から「玄米を食べよう!!」と大きく書かれた紙がぶら下がっています。玄米の効能や、五穀米と玄米のレシピなどが棚に飾られているようなお店です。そうして、店のなかには、ブリキのバケツに入った色んな農家の玄米が入っています。
 私が店に入ったら、ぼんやりとした顔の若い女の店員さんは、常連らしきオバサンと話をしながら会計をやっていました。会計は終わったのに話が終わらないので、私は店内をグルリと回って、少ししてからまたオバサンの後ろに並びました。それでも店員さんとオバサンの話は終わりません。店員さんは、私がいるのをわかっていて話を切り上げようとするのですが、お得意さんのオバサンの話は切れ目がありません。ついに韓国ドラマの話になり、「冬のソナタ」の名前が出てきました。私よりも年長の人が、「冬のソナタ」の話を始めたら、それはもういつまでたっても終わらないということを私は知っていたので、思いきって「お米をください。」と、店員さんに言いました。
 ぼんやりした顔の店員さんは、パッと振り返り「すみません」と謝りました。突然だったためか、お得意さんのオバサンは口を開けたまま、数秒そこに立っていましたが、荷物を持ち直して店を出ていきました。
 「アキタコマチを2キロ」と、私が言いますと、店員さんは、「すみません。すみません。」と、とてもアタフタして、狭い店内を身を捩って移動し、計るためのプラスチックの桶を片手に、急いでアキタコマチのバケツに駆け寄っていきました。
 店内の計りでお米を計っているのを見届けた私が「玄米を食べよう!!」という紙がヒラヒラしている下に立ち、五穀米の効能のプリントを眺めている間に、店員さんはお米をもってレジの方へ走っていったようでした。私が財布を出して顔を上げると、既に遅し。お米はレジの後ろの精米機に・・・・・
 精米されてしまいました。私は玄米を買いに行ったのに。
「玄米を食べよう!!」と、あんなに推奨している店なのに、なんで、尋ねずに精米するんだよおおおお。と、私はぼう然としました。しかし、自然食品の店では私は初心者です。黙ってお金を払って帰ってきました。今日はとてもショックな一日でした。