窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

自転車

 自転車につけるスタンドが入った。と、連絡があったので、駅近くの自転車屋に向かった。先日駅まで行ったときに通った自転車屋だ。私のMTBは、以前T君が色んなパーツを組み立ててくれたもので、そのフレームにはセンタースタンドしかつかない。そうして、各パーツが古いので、そのまま整備をしてもらうことにした。でき上がるまで2時間くらいと言われて、私は自転車を預けて駅辺りへ向かった。
 大学時代から歩き慣れた坂を下って、以前あしか君が住んでいたあたりはまるで違う道のようだった。古道具屋や喫茶店も無くなって、何の変哲もない道になっている。私が昔住んでいた辺りまで足を伸ばそうかと思ったけれど、けっこう距離もある。取りあえず今日は駅まわりだけを散策することにした。まったく変わらない喫茶店が1件残っている。入ってみるとこんな時間だから客はいない。窓から眺める景色も学生時代と変わらない。うーん。懐かしいというよりも何だか不安。座敷ボッコになった気分(多分)。
 自転車屋に戻ると、オジサンは「すべて整備しました。」と、胸を張っている。店内には、最新式のMTBがずらりと並んでいる。が、なんかなあ。オジサンの口調が私はいまひとつ気に入らない。つけられたスタンドもなんとなく格好悪い気がする。しかし、引っ越し疲れはこういうところにも影響していて、つまりはなんでもイイや。と言う気持ちだ。
 帰り。下り坂を降りてブレーキをかけると甘い。降りてチェックするとシューが偏っている。手を付けた形跡無しだった。