窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

お茶の水界隈へ。丸ノ内線お茶の水駅を降りて、神田川沿いの坂を下りると昌平橋辺りにでる。その近くの額屋さんに用事があるのだ。お茶の水駅から明治大学周りは、昔とは驚くほど変わってしまった。明大はもちろんのこと、周りの店も潰れたり新装開店したり。私がお茶の水あたりを徘徊していた10代後半から20代あたりまでの間にあった店は、数少ない。そういう店も他の新しい店よりも、少し奥まってあるように思えてしまう。実際は舗道沿いの入り口は、ほぼ一列に並んでいるはずなのだけれど、昔の店はひっそりとしていて目を凝らしてみないと見つからない感じがする。
それに比べて、昌平橋への道は、たいして変わりはないように思う。丸ノ内線出入り口際の郵便局も変わらない。私は浪人時代、受験の申し込みをこの郵便局から出した。予備校のクラスメイトと一緒に出しに行ったにもかかわらず、私の受験票だけが、届かなかったり遅れてきたりしたことを思いだし、横目で見ながら通り過ぎた。あの郵便局から出すと、合格するとか落ちるとか、試験場でパレットを首から下げた人(通称パレットおじさん)を見ると落ちる、だのと、そんな話が浪人時代にはいくつかあった。
神田川を昔のようにゴミ処理舟が通り過ぎる。川面がさわやかに思えるのは、浪人時代がはるか昔だからというせいもあるのかもしれない。
道路を挟んで湯島聖堂がある。今の季節は人もいない。確か入り口辺りに甘味処があったように覚えている。受験シーズンにはとんでもない混雑だったと、数年前に高校受験の娘がいた友達が言っていた。下り坂の勾配が少し急になってきたころに、淡路亭という看板が見える。壁のペイントには紅白の丸いボールらしきものが描かれているので、ビリヤード場だと思われる。ボール紙で作った営業中という札がいつもかかっているけれど、外からはわからない。私はビリヤードはできないけれど、一度入ってみたい。並びに「B1囲碁」と書かれた看板があり、ここも覗いてみたい。お茶の水界隈には、そんな店がいくつかある。