窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

「明日はノースリーブで大丈夫くらいの気温です。」と、昨日天気予報のお姉さんが言っていた。11月だと本当かしら。と思っていたけれど、本当ではなかった。まあ確かに暑いけれど、私はセーターを着ていた。とはいえ、やはり今年はまだそれ程寒くないように思う。夏が終わったのも遅かったし、もうずいぶん前から虫の声も聞こえなくなっているけれど、秋〜という様な風情が、近所ではみられない。庭のモミジもまだ色づいていない。
庭の机に置き忘れた軍手の上に、大きなカマキリがいた。私の方に背を向けて、全く動かない。小枝でつついてみたけれど、釜をしっかりと顔の前に折りたたんで、かたくなな様子である。それでも、カマキリはいきなりキチキチと飛んだりするので油断はならない。油断はならないと思いながらさらに肩を(の様な場所)をソロソロと撫でてみた。無論小枝でだけれども。全く動じない。多少褪せた草色の背中が、なんだか厳しい。
そういえば、月桂樹の高いところに二つ並んでいた卵はどうしたろうか。今年はあまり針のようなコカマキリを見かけなかった。トンボも蝉も見かけた時期が、普段よりも短かったように思える。単に私がぼんやりしていたからかもしれないが。