窯猫通信覚書

絵描き・銅版画で本の挿画等描いている市川曜子の銅版画日記です。

岡山の佐野さんから和紙のサンプルが届いた。彼女は版画家で、私の所沢時代の友人だ。先日会ったSちゃんは、佐野さんの日芸時代の同級生。私が所沢に居たのは2年少し。考えてみれば佐野さんが近所に住んでいたのはそれよりも短かったのか・・・。それでも、10年経った今でも連絡を取りあっているし、佐野さんの同級生だったSちゃんと私は飲みに行ったりしている。不思議なものだ。

で、紙の話。佐野さんは学生時代から木版画を作っている、私のように大学では版画を専攻していなかったものからすると彼女から学ぶものは多い。私は銅版画だけれど、和紙を時折使う。だが、なかなか塩梅のよい和紙が見つからない。和紙は結構高価で、塩梅と言うのは多少は値段もかかわってくる。彼女が送ってくれたのは、無形文化財にもなっているという紙。「おお、私の求めていたのはこの紙なのか?」と、思ったり、「イヤイヤ、まだあるかも。」と、思ったり。でも、かなり良い塩梅だ。気になるのは、これを漉いているのは1箇所だけというところ。

この紙でなければイカンのだ!!という紙を見つけたい。こういう紙というものは決まっているのだけれど、更にそれ以上のものに出会いたい。もうそうなると、版画云々ではなくなってくるような気がしてちょっと怖い。唯一の紙を求めて、鞄一つを持って日本中を歩き回りたい。山下清みたいに。(別に、山下清は紙を求めて放浪したわけじゃないけど。なんとなく。)そうして、ついにその紙に巡り合って「おお、これだ。これこそが、私の求めていた和紙なのだ。」と、感動するの。

こういうことばかり言っているから、私はあまり信用されない。